まいだいありー。

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少女文學演劇(2)「王妃の帰還」感想

2022/03/20~27にかけて上演された舞台、少女文學演劇(2)「王妃の帰還」の感想ブログです。

応援している岩田陽葵さんの初主演舞台ということで上演前から楽しみにしていたのですが、もうこの作品が心から大好きになりました。

岩田さん演じるノリスケはもちろん、一人一人のキャラクターが好きで、物語が好きで、この作品を観られたことを幸せに感じています。

大切な作品の感想、ちゃんと言葉にして残しておきたい。そんな気持ちで書いていきます。

 

ひとまず今日は、物語(楽曲)の流れに沿ったその場面ごとの感想を書いていこうと思います。後日改めて、全体の感想を書きたいという宿題を自分に込めて。

 

M1 Ancien Regime ~身分階級~

妄想全開ではしゃぎまわるノリスケがかわいくて、冒頭からもう笑顔でいっぱいになっちゃいます。各グループの特徴が分かりやすく表現されていて、初見時から各グループの立ち位置がすっと理解できました。

ゴス軍団の時にドラム等のロックサウンドが鳴っていたり、チームマリアの時にハンドベルの音と一緒に鳴らすような振り付けがあったり、この曲に限らずグループに合った音楽アレンジがあるのが好き。

 

その頂点に立つ王妃の告白。ギロチンが落ちる時の王妃(今まで見せたこと無いであろう弱った顔)・ノリスケ(信じられないことが起きたという驚き)・エリナ(悪い顔!)の表情の対比が印象的でした。

 

その後の図書館での地味グループの会話、ノリスケがみんなのことを心から大好きなことが伝わるのが微笑ましい…。女の子は噂話が好きという感じで、王妃のことを心配しつつもどこか別世界のお話として盛り上がってるのが印象的でした。リンダさんの「おぉ、おいたわしや(ヘッ )」が、毒の中にもノリスケの言う『何を言っても憎めないところがあるのだ』を感じる可愛げがあって好き。

 

M2 ノリスケの妄想 ~チヨジとの別れ~

ノリスケの妄想なので、エリナやチヨジがきっと実際にはしないであろう表情が見られるのが見どころ。「実は眼鏡を外すとかなりかわいい」でキメ顔をするチヨジと、それを「かわいい~~~」という感じで見るノリスケが好き。

曲の最後、チヨジからの電話で音楽がブチっと切れて妄想から現実に引き戻されて、それまで全力で「チヨジー!」という感じで浸っていたノリスケが急にばつが悪そうにそそくさとなるのも好き。

 

シズラーでのシーン。この時は「あれれ?チヨジがいるよ?」ってとっても楽しそうにチヨジの元に駆け寄っていくんですよね…。


M3 葛藤

この曲、特に大好きな曲の一つです。ノリスケが自分の嫌な部分に気づき、戸惑っているのがすごく伝わってきて、特に歌の途中に上ずったような息遣いが聞こえるのがその戸惑いを表していると感じます。きっとノリスケは今まで自分の中にそんな黒い感情があるなんて思いもしなくて、その困惑がダイレクトに伝わってきました。

 

M4 王妃転落

王妃に向けられる悪意に圧倒される曲。エリナ達の激しい言葉と、それを受けてなすすべもない王妃の対比が見ていて辛くなってしまうほど。

ノリスケはその光景を見ていられなくて背を向けちゃうんですよね。。そんな中、スーさんが最初に声をかける時、その前にすごく勇気を振り絞っているようなところが好き。そんなスーさんを見て、ノリスケも、チヨジやリンダさんも頑張って声をかけていて。

階段を降りてノリスケ達のところへ向かう王妃が階級落ちそのものを表現していて、席の高さで階級の高低を表しているこの舞台セットの巧みさを思い知ります。

「パンが無ければお菓子を食べればいいじゃない」での、王妃の空気の読めなさに心底驚いているノリスケの表情が大好きです。

 

その後の王妃との図書室でのやり取り。王妃の言葉に圧倒される地味グループ4人が右に左に傾くのがコミカルで好きです。

 

M5 チヨジの反撃

この曲に入るとき、ノリスケが「やったれ!」みたいに左手でチヨジをけしかけるのが好き。自分から面と向かって王妃に立ち向かう勇気は無いけど、チヨジの後ろからなら強気になれるというのがとってもノリスケらしいなって。

チヨジやみんなの怒りとは対照的に、この曲での王妃がとっても弱弱しく見えるのが印象的。そして歌とダンスがかっこいい!!チヨジと他の3人が交互に歌う所や、曲の最後のキメが特に大好きです。

 

泣きじゃくる王妃に、それを見下すノリスケ。ここで自分の黒い感情に気づいて困惑するノリスケの演技がリアルですごかった…。そんな感情を「全部王妃が悪いんだ」と切り捨ててしまう所は自分に言い聞かせているようで。。。

そんな王妃に優しく話しかけるスーさん。きっとこの舞台の登場人物の中でいちばん広い視野を持っているのがスーさんだったのだと思います。「滝沢さんが悩んでるのって、狭い教室の中だけのことだよ」なんて言えるのは彼女だけ。そんなスーさんを見て、自分の考えの子供っぽさに気づかされつつも釈然としないノリスケの心の動きが見える演技、好きです。

 

M6 Diamant

かわいいで頭が埋め尽くされてしまいました。毎回それはもう満面の笑みで観てた…。

もうこの曲についてはどうこう言うのが野暮ってもんです。ノリスケのかわいさがこれでもかと詰め込まれた最高の曲でした。脳内メモリーに永久保存したい。

 

ティーパーティーのシーン、リンダさんに褒められて得意げになっているノリスケかわいい。。

王妃がいることが分かって「わたし帰るー!」って言うリンダさん、原作を読んでから舞台を観るととっても分かりやすいんですが、ノリスケを引っ張って味方に引き込んだり、王妃の方をちらっと見てからわざとらしく騒いだりというのがとってもリンダさんっぽい。

スーさんに促されて謝る王妃。スーさんには王妃もなついているんだってこともわかるし、学校ではない場所だからこそ王妃も変なプライドを抑えて、悪かったものは悪いと認められたのかなと感じます。

不満を口にする王妃にぴしゃりと言うチヨジ、そんなチヨジを頼もしく見るノリスケ。このノリスケのチヨジへの絶対的な信頼を見た上で、その後のノリスケのチヨジに対する気持ちの移り変わりを見ていくのが楽しかった。

ディアマンを口にして、満面の笑みを浮かべる王妃がとてもかわいくて、それまで高慢な面ばかりが見えていた彼女の素直な一面がとっても良かった。

首飾り事件について話すノリスケ、オタク特有の早口で嬉しそうに話すところがめちゃくちゃノリスケって感じで大好き。

 

M7 首飾り事件

操り人形な動きの枢機卿と伯爵夫人、黒子に操られながらのコミカルな動きが見ていてとっても楽しい。ゆったりとしたワルツも重なって、Eテレで流れてそうな人形劇を見ているようでした。見ているだけのはずの王妃が「アントワネットは無関係」でいつの間にか参加していたりするのも楽しい。

 

エリナにはめられたのかなと言った後、「このこと、誰にも言うんじゃないわよ」と言う王妃。この時すでに王妃は、自分の取ってきた態度とエリナの弱さがこの事態を招いたことに気づきはじめていたのかもしれないって感じます。

 

地味グループファッションショー、みんなぎこちなくランウェイ(階段)を歩いてくるのが微笑ましい。毎回のアドリブ楽しみにしていました。ノリスケがいつも照れてうまくできないのがかわいい。

 

タッキーのヘアアレンジ、ギャルズの興奮っぷりが公演を重ねるごとにどんどんエスカレートしていくのが楽しかったです。そのあと後ろで撮影会しているのも好き。

同じくアレンジしてもらう伊集院さんがかわいかった…。平静を装うために本を読むふりをするけど逆さまになっていることを指摘されたり、鏡を見て嬉しそうな顔をしたり。

 

その後の図書室でのシーン。エリナ達に対して言い返すチヨジと、立ち上がったチヨジの後ろに隠れて「そうだそうだ」とやっているノリスケというのが、二人の性格をとってもよく表しているなと思います。

「滝沢と同じ目にあう、ってことだよ?」エリナ怖い!!!笑顔でかわいく言うのほんと怖い。

うろたえるリンダさん。「絶対にいじめられたくない」でチヨジも反応してるんですよね。彼女も小学生時代にいじめられた経験があるというのは原作を読んで知ったので、そういった原作を読んだからこそ分かる芝居がそこかしこに散りばめられているのが更に観劇を楽しくさせてくれました。

 

M8 ノリスケの決意

ノリスケの強さが垣間見える曲。こんな状況で前を向ける意志の強さはノリスケのすごいところで、前をしっかり見据えながらポニーテールを結ぶ動作の美しさには毎回見とれていました。決意に満ちた表情が大好き。

 

リンダさんがいないことに気づくシーン、エリナが舞台からはける時にめちゃくちゃ悪い顔でノリスケ達の方を見てるんですよね…。リンダさんを焚きつけたのもエリナなんだと想像させてくれるあの表情、ものすごかったです。

リンダさんがゴス軍団に入ってしまったという大変な状態で、シズラーにおいでよと誘うチヨジに対して、こんな大変な時に何をいっているんだというノリスケの表情。この時からノリスケのチヨジに対する態度が少しずつ変わっていくのを感じられるのが、観ていて楽しかったです。明るくふるまうチヨジも、とっても寂しそうな目をしていて。この後の展開をふまえてこのシーンを見ると、心がきゅってなります。

 

M9 変わる心

チヨジに対する気持ちが変わってしまっていることを「自分の心すら操れない」と戸惑うノリスケ。冒頭でずっと安泰と言っていたのが嘘のようにリンダさんも、チヨジも変わっていってしまって。モーゼなんて大げさな妄想をしてしまうほど、ノリスケにとっては大変なことが起きているのだと感じさせられました。

 

 

2度目のシズラー。「おーい」と呼びかけるノリスケの声が、1度目に比べて明らかにトーンが低くて、チヨジへの絶対的な信頼感が無くなっていることに気づきます。黒崎さんたちに声をかけようとするノリスケを止めるチヨジ、彼女にとってシズラーは教室という世界から切り離された安心できる場所だったんですよね。

教室とは別人のように縮こまっている黒崎さんたち。教室という世界を一歩出ればみんなただの女子中学生であり、子供たちだけで夜遅くまで出歩くことさえできないんだということを認識させてくれました。ママに集まる尊敬のまなざしに得意げになっているノリスケかわいい。ハンバーグとGARASHA様の生写真にはしゃぐゴス軍団、ほんとにただのかわいい女子中学生。

「アンタを見込んで話がある」とノリスケの手を引く黒崎さん。何を見込んだのかなと考えた時に、一度自分たちのグループから離れたリンダさんに笑顔で手を差し伸べ、また一緒に仲良くなれるノリスケの優しさを見込んだのかな、と思いました。

今まで誰にも言えなかった秘密を打ち明ける黒崎さんは、本当にノリスケ達と何も変わらない悩める女の子で、良い人と言われて照れる姿はノリスケがニコニコしちゃうのもわかるくらいキュートでした。歌に入る直前、「シメるぞ」なんて怖い言葉を言った後にノリスケに見せる笑顔が本当に良い笑顔でした…。

 

M10 ラインを超えよう

この曲も大好きな1曲…!
教室ではない場所だったからこそ、グループなんて関係なく向き合うことができたノリスケと黒崎さん。そんな二人の歌う理想に背中を押されるような気がします。

大人になったわたしたちも、時に人をラベルを貼って見てしまうこと、ラインで分けてしまうことがあります。もちろん一概にそれが悪いことというわけでは無いですが、もし良い関係になりたいのであれば、認め合い踏み出す勇気が必要なんだと。

そんな決して特別ではないけど、大切な思いをいきいきと歌い上げる姿に、どうしようもなく惹かれ、胸が熱くなりました。

 

王妃からの告白。小説版ではホッシーとノリスケのお母さんが付き合っているという舞台版ではカットされているお話があるんですが、ツーショット写真の話を聞くノリスケの反応を見て、そのことも踏まえて演じられているんだと感じました。

「星崎先生をクビになんてさせないわ!」と今まで見たことのないような激しさのスーさん。そんなスーさんを見る王妃の表情が、同志を見る表情なんですよね…。最初からスーさんには懐いていた王妃、その理由の一つにはスーさんの秘めた想いを知っていたこともあるのかな、なんて思いました。

一方、そんなスーさんの気持ちに全く気付いていなかったノリスケ達。あきれたように「あんたたちってほんとにガキね」と言う王妃の気持ちも分かります。

 

M11 学級会

各グループの個性のぶつかり合いが楽しい!この曲もグループごとに曲調が変わっていくのが好きです。あるグループが何か言うたびに別のグループが反対してというカオスな状況に、ただただ無表情に流される地味グループという対比も楽しい。「わたしたちは中学生…です!」の決めポーズ、みんな違うの好き。

せっかくクッキー屋でまとまりかけていたのを「わたしクッキー食べたくなーーい」で全部ひっくり返すギャルズのわがままパワー、振り付けも含めてものすごくていつも笑顔になっちゃいます。

 

まとまらなくてついに泣き出しちゃう伊集院さん、すごい剣幕でやりあう各グループ、みんな協力してと叫ぶチームマリア、、絵に書いたような地獄を舞台で観るとこんなにすごいのかと感心すらしてしまいます。

 

M12 スーさんの追及

スーさんの毅然とした意志の強さと視野の広さ。あの教室の中で一番の大人であり、誰よりも星崎先生のことを一人の人間として見ていたスーさんだからこそ、安藤さんを許せない気持ちがああして爆発した時の迫力がものすごかったです。きびきびとした動きもあって、有無を言わせない凄みがありました。

安藤さんの横でエリナもびびり散らかして縮こまってるんですよね。本気で怒りをぶつけるスーさんの前では教室内でのヒエラルキーなんてちっぽけなもので、それまでも垣間見えるシーンはありましたが、エリナ自身の弱さがむき出しになったのはここが初めてでした。

クビだとか実家だとか、あまつさえ自殺といった教室という狭い世界を遥かに超えたお話を聞いて、みんなが事の重大さを認識していく様子がすごかったです。

 

安藤さんが泣きながら本当のことを告白したのも、スーさんが怖かったというよりも、自分がしてしまったことの大変さに気づいてしまったからなんだと思います。このシーンの安藤さんの狼狽っぷりが公演を重ねるたびに凄みを増していって、泣きじゃくる姿に安藤さんが感じている恐怖が伝わってきました。ほんとにすごかった。。

そんな安藤さんを見るエリナ。座る位置を遠ざけて距離を置き、「はーーこいつ使えねー」と忌々しげに困った表情をしたかと思ったら、安藤さんが王妃を指さして「この子が…!」と言い出したとたんに形勢逆転とばかりにすごい表情で王妃を見ていて、その一連の芝居に恐ろしささえ感じました。

 

そしてはじまってしまった来るな帰れコール。棚や椅子を叩く音がリアルで、王妃を取り囲むように責め立てる様子に恐ろしさを感じるし、それを歯を食いしばって受け止めている王妃の姿を見ると冒頭での弱弱しい姿からの変化を感じます。

「みんな不安なのだ。誰かにすべての責任を押し付けて、不安の原因を明らかにしてしまいたいのだ」というノリスケのセリフ。人は外からであれば冷静に物事を見ることができるんですよね。。

 

勇気を振り絞って「やめなよ!」と叫ぶノリスケ。引っ込み思案な彼女にとってどれだけ勇気がいることだっただろうと思うし、それだけ王妃を守りたいという気持ちが強かったのだと思わされます。王妃にうなずきかけることできっと力が湧いていたんだろうなとも。

王妃を友達と言った時のエリナのノリスケを見る嫉妬の表情。エリナが本当は王妃…美姫のことをどう思っているのかが分かる表情で、このことがエリナのノリスケへの憎悪を加速させてしまったのだと感じます。

自分にもいじめの対象が向いてしまったときのノリスケの表情…。恐ろしくて何も考えられないといったような茫然とした様子が、かえって彼女が受けているショックを感じさせてくれました。

 

そしてクラスを二分して始まったバトル。もうめちゃくちゃかっこよかった…!
キレキレのダンスに、舞台中のどこを見たらいいのか分からないほど入り乱れてのバチバチ感。毎回今日はここを見ようっていろんなところに注目しながら、手に汗握って見ていました。

2つのグループに分かれてのダンスバトル。このシーンで思い浮かべたのが、ウエスト・サイド・ストーリーの「Dance at the Gym」でした。もちろん曲調も物語の背景も全く違いますが、テンポの良さや迫力から受けるイメージがまさにそれで、本当にかっこよかったです。。

 

スーさんを待つシーン。チヨジに褒められるノリスケの表情がぎこちなくて、おどけてノリスケの真似をするチヨジには怒りの表情さえ向けてしまっていて。その直後に王妃にお礼を言われた時の満面の笑みとの対比が、この後起きることへの布石として効いてきます。

ホッシーの疑いが晴れたことを伝えるスーさんに対する王妃の表情が、それはもう安心とスーさんへの感謝に満ちた柔らかいもので、取り繕うことをやめた彼女が本当にかわいいと感じました。上手の席からしかちゃんと見えなかったあの表情、しっかり見られて良かったです。

一方、その知らせを聞いて王妃の元へ駆けていこうとするノリスケと、その手を引いて自分のところに引き寄せるチヨジ。もうチヨジもノリスケの気持ちが自分より王妃に向いていることに気づき始めていて、大げさに褒めたり真似をしたりといった行動も含めて、なんとかノリスケの気持ちを自分に向かせようと頑張っているんだと思うと。。

 

文化祭準備のシーン。大人になって仕事を持てば、、というお話は本当にそうだなと思って、お互いを認め合って尊重することが自然にできるようになってくるんですよね。この場面の4人の柔らかい空気感が好きで、物語の開始時点では想像もつかなかった組み合わせで笑いあえていることに小さな感動さえ覚えてしまいます。

スタイリストやデザイナーと言った夢を口にする王妃に、それを聞いてはしゃぐノリスケ、そんなノリスケを見るチヨジ。ほんの一瞬なんですが、この時のチヨジの表情が決定的にノリスケの気持ちを理解してしまったように見えてしまいます。

 

自分たちの名前だけが入っていないTシャツを渡されたノリスケ。もうその表情はエリナへの怒りに満ちていて、王妃が止めなかったらどうなってしまっていたんだろうと思ってしまいます。王妃に家に行っていい?と聞かれて驚きながらも嬉しそうにうなずくノリスケ、それを見るチヨジ。暗転してしまってその先は見られませんが、チヨジがどんな思いでノリスケと王妃を見ていたんだろう…と想像すると胸が苦しくなります。

 

王妃と裁縫をしている中でかかってくるチヨジからの電話。着信を見たノリスケの表情は、もはや「邪魔しないでよ…」とでも言わんばかりのものでした。電話の最中もしきりに王妃の方を気にして、気もそぞろといった感じで浮ついていて、チヨジの声のトーンの深刻さに全く気付いていない様子が見ていて本当に悲しくなってしまいます。

 

王妃と二人でくっついて写真を撮るノリスケは本当にうれしそうで、すっかりチヨジのことなんて忘れて舞い上がっているようでした。そんな王妃から出てきたエリナの名前に冷や水を浴びせられ、楽しそうにエリナの話をする王妃を見る表情は…。

 

M13 砂の城 ~ノリスケVer~

ノリスケから見た王妃、チヨジから見たノリスケ。二つの世界が同時に崩れ去る様子を見事に描いていました。ノリスケもチヨジも、それぞれが抱えている寂しさ、相手の気持ちが自分ではなく他の人に向いていることの寂しさが痛いほど伝わってきます。

でもノリスケはチヨジの気持ちには全く気付いていなくて、二人で歌っているのに二人の視線が交わることは全く無いという形でその一方通行な矢印が表現されているところがすごい。

 

どうしてそんなに優しくしてくれるの?と聞かれて、思わず王妃と口走ってしまうノリスケ。取り繕うように早口でしゃべるノリスケに対して嬉しいと伝え、「もうお城になんて戻らなくていい」「ノリスケと仲良くしたい」と言った王妃の言葉にはきっと嘘は無かった、その時は本気で王妃はそう思っていたんだろうと思います。

 

そしてチヨジの豹変。ここにきてようやくノリスケは自分のしてきたことに気づいて、必死にチヨジにすがるノリスケと突き放すチヨジという光景は、何度見ても胸が締め付けられるように苦しいです。ここまでチヨジが感じてきた寂しさを思えば、こうなってしまったことを責めることはできないし、同時にエリナが今のような意地悪な子になってしまったことも、、と思います。エリナはチヨジに自分と同じものを見出したのかもしれない、とさえ。

チヨジの「滝沢さんに憧れてたんでしょ?」という言葉を聞いて、エリナの表情が変わるところも見逃せなくて、少し前にノリスケが王妃を友達と呼んだ時と合わせて、エリナが本当は美姫を好きなことと、そんな美姫を横取りしようとするノリスケへの冷たい気持ちがさらに見えるようでした。

 

M14 砂の城 ~チヨジVer~

短調でのリプライズ。この曲に込められたチヨジの悲しみ、怒りの深さに、特に公演後半では息を呑むような思いをしました。積み重ねてきた想いの爆発、暴走。いかにチヨジにとってノリスケの存在が大きなもので、だからこそノリスケの気持ちが自分に向いていないと分かってしまったときの絶望の大きさをこの曲から感じます。

「別の世界の人になってしまった」というノリスケの言葉。失ったものの大きさに気づき、後悔でいっぱいのノリスケの姿が本当に悲しいです。

 

姫として君臨するチヨジと徹底して嫌われるノリスケ。気づかないうちにチヨジを傷つけてしまっていたことへの後悔はきっと多くの人が経験のある痛みで、このシーンのノリスケの言葉は胸に突き刺さる思いがしました。チヨジの拒絶も、ノリスケの気を引くためとか拗ねているとかではなく、本当にこの時はもう修復できないものと考えているのだと感じました。

 

M15 チヨジ転落

我が物顔でオタク全開のアイドルステップをするチヨジ、「お前らもやるんだよ」とクラスメイトを煽るエリナ、空気が全く読めてないことを心配するノリスケ達、しぶしぶ付き合うクラスメイト。そしてこのタイトル。。エリナが恐ろしすぎる。

最初にチヨジにNOを突き付けるのが伊集院さんというのが最初は意外でしたが、ここも小説を読むとその理由が分かって、委員長の彼女らしいなと思いました。

チヨジに対して手の平を返すエリナがあくまで笑顔なのが更に恐ろしいですよね。。

 

転落するチヨジを心配げに見るノリスケの表情は、やがてエリナへの怒りに変わって。「村上恵理菜をつぶす」なんて、物語序盤のノリスケからそんな言葉が出てくるなんて思いもしなかった。それだけノリスケの中でエリナに対する怒りが大きくなって、ついに爆発してしまった。

 

M16 革命前夜

見方によっていろんな見方ができる曲。

ひとつは歌詞の通り、使命に燃えて突き進む勇ましい曲。ノリスケの強い決意に感動し、まさにジャンヌダルク!!という想いになる曲。グループの垣根を壊す革命を起こそうとするその決意はとても尊いものに感じます。

でも見方を変えると、自分の怒りを正義という錦の御旗によって正当化し、暴走しようとしている曲。自己陶酔。

曲の最後でエリナをにらみつける表情も、上記のどちらに立つかで全然見え方が違って見えて、この物語のすごさを感じます。どちらが正しくてどちらが間違っているというわけではない。

 

エリナとの直接対決。安藤さんが握っている弱みは本当に子供じみたもので、きっと大人だったら笑って流せるようなものかもしれないけど、中学生のエリナにとっては自分を否定されたかのような大きな秘密で、すっかり動揺してしまっていました。そんな状況を上から眺めるノリスケの表情が残酷で…。この状況を見る王妃の思いつめた表情も好き。

ノリスケに突っかかるエリナの言葉には、自分が責められたことへの必死の反論というだけでなく、ここまで抱えてきたノリスケに対する憎しみが込められていました。ノリスケから見える世界とエリナから見える世界はこうも違うのか、と思わされるほど。

エリナに責められたノリスケが、言葉で言い返せずに叫びながらエリナに飛び掛かるのも、とっても中学生らしいと思います。もう心の中は怒りでいっぱいで、その気持ちを言葉にすることができずに、ただただ相手にぶつける様子。「全部あんたが悪いんだ!」と叫ぶノリスケは、以前自身が言っていた「誰かにすべての責任を押し付けて、不安の原因を明らかにしてしまいたい」という状況そのもので。「ノリスケ、頑張れ、ノリスケ、負けるな」とエールを送るクラスメイトも、群集心理にひきずられていて。この状況が王妃を悪者扱いした学級裁判と何も変わらないということにノリスケが気づけないのは、当事者として必死に戦っているからなんだと感じます。

ノリスケとエリナの取っ組み合い。髪の毛をひっぱったり、投げ飛ばしたり、掴みかかったり、お互いただただがむしゃらにぶつかり合う姿がめちゃくちゃリアルで、二人の凄みに圧倒されて、毎回息を呑んで見ていました。

クラス全体がノリスケを応援する中、ただ一人王妃だけは冷静な目で目の前の状況を見ていました。エリナのことを大切に思っている王妃だからこそ、落ち着いて物事を見ることができていたのだと思います。

 

エリナをかばってノリスケを止める王妃。王妃の凛とした表情、ノリスケの信じられないものを見るような表情、エリナのおびえたような表情のそれぞれが印象的でした。

「正論で誰かを打ち負かしても、一人に全部の責任をなすりつけても、何も解決しないんだよ」という王妃の言葉。フランスの財政破綻を例に挙げて、歴史に学んでいるノリスケなら本来分かっているはずのことを諭すように話す王妃は、彼女なりにノリスケのことをちゃんと理解したうえで向き合っていることがわかり、とっても大人に見えました。

 

M17 王妃の帰還

ホッシーへの恋する気持ちを持っている王妃だからこそ、エリナの幼い恋心を笑うようなやり方をするノリスケの残酷さをひどいと言えたのだと思います。

安藤さんやスーさんがはっとした表情で我に返るところも好き。

この曲のタイトルが「王妃の帰還」なんですよね。傍若無人なお姫様ではなく、人の心を慮れる優しさを持つプリンセスに成長した彼女が、自らにふさわしい場所へ帰還していく姿。

 

もうすっかり意地悪で強がりな仮面を外し、子供のように泣きじゃくるエリナが、「ごめんね…美姫」と王妃の名前を呼ぶシーン。エリナも本当は美姫のことが好きで、なのに美姫のわがままな態度に気持ちが爆発してしまって、気が付いたらもう自分でも止められない状況を作り出してしまっていたのだと感じます。美姫に意地悪な態度を取っていた時、家に帰ったエリナはどんな気持ちでいたんだろうと想像すると、これまでの彼女の行動をただ嫌な奴で片づけることはできなくなります。

「あなたは私の一番の友達」という、美姫からエリナへの言葉を聞くノリスケの表情…。今書いていてもあのやるせない表情を思い出すと、胸が締め付けられます。必死に戦ったのに、今や自分は悪者で、王妃にとっての一番は自分ではなくエリナで、周りには誰もいなくて。。ぶつけどころの無い気持ちをもてあますかのようにスカートのすそを掴んだり腕を振る姿に、彼女の感じているどうしようもない敗北感が伝わってきます。

そんなノリスケの肩を、優しくたたくチヨジ。ノリスケにもちゃんと大事な人が側に居てくれること、お互いのことが大好きな二人が元に戻れたこと、本当に救われた思いがします。小説とは展開や解釈が異なりますが、素直に謝りあう美姫とエリナを見たからこそ、チヨジも自分の気持ちに素直になって、もう一度ノリスケの手を取る強さを持てたのかなと思いました。

 

M18 Ma petite princesse / M19 Ma petite princesse(リプライズ)

この先は全体の感想の中で改めて書きたいと思うので、今回は細かく書きません。

これを書いているのはまだ千秋楽前で、千秋楽を見終わってからじっくりと気持ちを整理して書けたらいいな、と思っています。

 

「王妃の帰還」というタイトルの持つもう一つの意味、そしてこの曲名に込められた意味。この舞台の中でいちばん大好きなシーンです。何度見ても心が温かくなって勇気をもらえる、大切なシーンです。

 

 

(ここから千秋楽後に追記)

本当に…ありがとうございました。

誰も欠けることなく全公演を無事に駆け抜けられたこと、全て出し切った千秋楽公演を観られたこと、心の底から幸せでした。

わたしにとっても大切な、宝物になりました。

後日配信も決定し、本当に嬉しいです。劇場とはまた違う形であの教室に帰れる日を楽しみにしています。